今回は体外受精について記載していきます
体外受精-胚移植(IVF-ET)は
体の外で卵と精子を一緒に培養して受精させ(体外受精)、「胚」に育てた後、子宮内に移植して(胚移植)着床を持つ治療方法になります
卵子が受精するか、良質な胚に育つか、その胚を的確に移植できるかなど、治療の過程には幾つかのポイントがあります
体外受精では、原則として女性の採卵と男性の採精を同じ日に行います
通常は、まず妻から採卵し、その場で顕微鏡を用いて卵子の存在を確認します
卵子があることがわかったら、夫は採精室へ採精された精液は30~60分静置して液化させた後、余分な細胞成分などを取り除き、運動性の高い精子の集団のみを選別して『媒精』に用います
『媒精』とは、卵と精子を一緒に培養して受精させることです
受精は、培養に用いる浅い容器(ディッシュ)の中で、精子が自ら卵子に侵入することで起こります
卵子に侵入し受精する精子は1個だけですが、ディッシュに精子を1個入れただけでは受精は中々成立しません
精子は『群れ』で協力し合うことで、卵子に侵入する事ができます
体外受精を成功させるために必要な運動性の高い精子濃度は1mL中に10万個ほど必要と言われています
この数を確保するためには一般に、精液1mL中の精子数が500万個以上あることが条件とされています
500万個未満でも体外受精ができることもありますが、成功率はやはり低くなります
そのため、夫に重い造精機能障害がある場合は、体外受精でなく、顕微授精を選択することが多くなります
媒精から2期間ほどで、卵子の中に精子が侵入して受精卵となり、28時間後には2つの細胞に分割して、『胚』と呼ばれる段階に入ります
さらに36~48時間後には4細胞期胚となり、以後12~16時間ごとに分割が繰り返されます
子宮内に移植されるのは、受精後2~3日たった4~8細胞期胚です
これら初期胚を子宮内に移植すると、数日かけて胚盤胞に成長し、ハッチング(孵化)を起こした後、子宮内膜に着床します
移植可能な良質胚がいくつできるかは、採卵できた卵子の数とその成熟度、さらに精子の受精能に左右されます
移植できる胚の数は、多胎妊娠防止のため3個までと制限されているので、移植前には胚の選別を行います
受精3日後の段階で8分割していて、フラグメントと呼ばれる顆粒が少ない場合を良質胚とします
フラグメントは胚の細胞質が変化したもので、多すぎると胚に染色体異常がある確率が高くなります
胚移植は、胚を培養液ごと専用の軟らかい管(カテーテル)に入れて、子宮の入り口から1cm程度の場合に送り届ける作業になります
特に問題がなければ数分で終わるのですが、実は医師の技量が問われる場面でもあります
移植に手間取ると、子宮頸部からの出血量が増えて、その後の着床・妊娠に悪影響を及ぼすことがあるのです
そのため、カテーテルが体に合っているかを確認する、模擬的な挿入を本番前に行います
子宮頸部に極度の狭窄や屈曲がある場合は、子宮筋層を貫いてカテーテルを挿入する
経筋層的胚移植(Towako Method)を行う場合もあります
病院の施設によって、設備が色々違ってきますので、成功率も病院によって変わります