医療機関における一般不妊治療にはホルモン療法、タイミング療法、人工授精(AIH)、卵管形成術などがあります

ホルモン療法について排卵がない、排卵が起こるまでの期間(低温期)が長い、あるいは黄体機能不全があるなど

基礎体温やホルモン検査により、このように診断された場合は、排卵誘発剤を使用して、排卵機能を回復させる治療を行います

ただし、自然の排卵がある人に対しても、妊孕性(妊娠しやすさ)を高める目的で、排卵誘発剤が処方されるケースも多くあります

このような治療は『過排卵刺激』、あるいは『調節卵巣過剰刺激』と呼ばれ、不妊治療におけるホルモン療法の主軸になっています

排卵誘発剤には、飲み薬(クロミフェンやセロフェンなど)と、注射薬(ゴナドトロピンと呼ばれるhMG製剤やhCG製剤)があります

排卵障害が軽度の場合は、飲み薬から始め、それで効果が得られなければ、より強力な注射薬による治療に移行するのが一般的な流れです

クロミフェン療法

現在、排卵誘発を行う際の第一選択薬として、最もよく使われているのがクロミフェンです

この薬は脳に働きかけて、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促すことで、排卵を起こさせます

GnRHは、脳の視床下部から放出されるホルモンで、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)が卵巣を刺激し、排卵を起こさせるという仕組みです

月経が始まって5日目ごろから5日間ほど、毎日1~3錠を内服すると、服用後およそ1週間で排卵を起こします

排卵が起こる確率は、無排卵の人で80~90%、第一度無月経(プロゲステロンの投与で月経を誘発できる、比較的軽度の無月経)の人で60~70%です

妊娠率は10~20%と報告されています

排卵率の割に妊娠率がさほど高くないのは、クロミフェンの副作用が原因と考えられています

クロミフェンにはエストロゲンの働きを抑える作用があるため、頸管粘液が減ったり、子宮内膜が薄くなってきます

このような副作用は、長期間服用していると出やすくなりますが、人によっては短期間で現れることもあります

もし排卵のころに分泌される頸管粘液(透明で長く糸を引くおりもの)が減ったり、月経量が少なくなったりしたら(子宮内膜が薄くなっている証拠です)、医師に伝えるようにしましょう

基本的には3周期以上排卵誘発剤を使用するとオリモノや子宮内膜は薄くなる傾向があります(妊娠が難しい状態になります)

排卵誘発剤は排卵はさせますが、妊娠は難しく別問題になります

一般に、クロミフェン療法を5~6周期行っても妊娠しない場合は、ゴナドトロピン療法に移行します