今回はゴナドトロピン療法について記載していきます
これは、hMG製剤とhCG製剤という2種類の注射薬を組み合わせて使う強力な排卵誘発法です
hMGは『ヒト閉経ゴナドトロピン』と言いまして、卵胞を発育させるFSH作用を持っています
一方、hCGは『ヒト絨毛性ゴナドトロピン』と言いまして、成熟卵胞を破裂させて排卵を起こしたり、黄体を刺激したりするLH作用を持っています
つまり、これらの薬は、卵巣に直接働きかけて排卵を起こさせていきます
治療では、月経周期の3~5日目から1~2週間、hMG製剤を毎日注射して、排卵の発育を促します
卵胞の成長については、経膣超音波検査で何度もモニターし、卵胞が十分成長したのを確認したら、排卵を起こす目的でhCG製剤を注射します
通常、この注射から36~48時間以内に排卵が起こります
そこで、この時期にタイミング療法や人工授精を行うようにします
排卵後も、黄体機能を維持するために、hCG製剤などを投与します
治療成績は、重症の第2度無月経(エストロゲンの分泌がほとんどなく、プロゲステロンを投与しても月経様の出血がない)の人でも、排卵率が60%、妊娠率は30%と報告されています
ただし、ゴナドトロピン療法にはデメリットもあります
まず、注射による治療なので、頻繁に通院しなければなりません
妊娠した場合も、流産率がかなり高く、約20%以上あります
さらに最大の問題は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と多胎妊娠が多いことです
OHSSは、排卵誘発をすることで多数の卵胞が育ち、その結果、卵巣が腫れたり、腹水がたまったりする副作用です
排卵を起こすhCGを注射した後に起こり、軽傷も含めると10~20%の人で生じると言われています
特に多嚢胞性卵巣(PCO)の人は、OHSSになりやすいので注意が必要です
また、一度に多くの卵子が排卵されるため、多胎妊娠も多くなります
頻度は約20%で、そのうちの3分の1が3胎以上、つまり三つ子以上と報告されています
多胎妊娠率は、自然妊娠では約1%、クロミフェン療法でも約5%ですから、いかに発生率が高いかがわかります
胎児数が増えるに従って、流産や妊娠合併症のリスクが上がり、胎児の予後にも影響しますから、多胎妊娠予防は大きな課題になっています
そこで、ゴナドトロピン療法では、OHSSや多胎妊娠を防ぐため、患者様の状態に応じて薬剤の量や投与法を変えるなどの工夫を行う医療機関が増えてきています