今回は卵巣過剰症候群(OHSS)について記載します

卵巣は親指大ほどの臓器ですが、卵巣内の卵胞が過剰に刺激されることが原因で、卵巣が腫れて激しい腹痛、吐き気、急激な体重増加、尿量減少、腹水などの症状がおこることがあります

これを『卵巣過剰刺激症候群(OHSS)』といいます

OHSSは排卵誘発の際に卵胞が過剰に刺激されることが原因のひとつとみられています

排卵誘発剤のうち、間接的に排卵を促進させるクロミフェンなどの経口薬で発症することは稀ですが、卵巣に直接働きかける注射剤のhMG-hCG療法で起こりやすいことが知られています

ちなみに

hMG(ヒト閉経期尿中ゴナドトロピン)…FSH(卵胞刺激ホルモン)に似た作用をし卵胞を大きくします
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)…LH(黄体化ホルモン)に似た作用をし排卵を促し黄体を刺激するのにも使われます

したがって、hMG-hCG療法は中枢の視床下部や下垂体からホルモンがでない排卵障害やクロミフェン無効の排卵障害に用いられます

OHSS発症の危険因子

OHSSは排卵誘発剤の使用によって起こりうる重大な副作用ですが 発症する方と発症しない方がいます

①    卵巣の反応性が良い年齢(18~35歳)
②    痩せ型
③    多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方
④    血中エストラジオール(E2)が高値
⑤    黄体機能補充にhCGを使用している
⑥    妊娠成立時(血中にはhCGが多い)

中国医学的に診ますとOHSSによって卵巣が腫れ上がり腹痛や腹水がたまっているのは『痰湿・血瘀』という病理産物が蓄積した状態です

①    年齢が若いと一般的に生殖を司る腎気は盛んで、この時期に排卵誘発すると急に多くの卵胞が育ち過ぎてしまいます

陰に属する癸水(きすい:生殖機能の基本物質)が卵巣卵胞に過剰に充満してしまい、水湿という物が体に溜まってきます 

②    体型が痩せているのは『陰虚』と言いまして、体が暑くなりやすく、ほてり、のぼせが感じやすくなります

陰虚内熱の場合は様々な因子に対し感受性が高まり発病しやすくなると言われています

③    多嚢胞卵巣は排卵できなかった卵胞が多く卵巣内に存在し、卵巣の膜は厚く硬くなってしまいます

ここにhMG-hCGが投与されるとさらに、悪化してきます

④    E2が高すぎるとこれも体内では痰湿の邪となります

OHSSの症状がみられた時は化痰・利湿・通絡の薬を用いますが、腹水の貯留、尿量減少など軽度でない場合は体内の水分バランスを見る事が大切です

OHSSにも原因や体質などにより、治療方法がひとりひとり変わってきます