今回は人工授精について記載していきます
精子を子宮の中に直接送り込んで、卵子と精子が出会う確率を高める治療法が人工授精(AIH)です
一般に、タイミング療法で妊娠しなかったときの、次のステップとして位置づけられています
AIHは『人工』という言葉の響きから、自然な妊娠とはかけ離れたものという印象を抱きがちです
しかし、子宮内に注入された精子は、その後、自力で卵管へと移動し、卵子との遭遇を果たします
その結果としての授精→着床→妊娠というプロセスは、自然妊娠と何ら変わるところはありません
AIHの対象になるのは
(1)精子の数が少ない、運動率が低いなどの軽度の男性不妊
(2)抗精子抗体などがあって、性交後試験(ヒューナーテスト)の結果が良くない
(3)頸管粘液の分泌が少ないなど
原因不明の不妊に対しても行われます
ただし、いずれのケースも、卵管につまりなどの問題がないことが大前提です
治療は、排卵にタイミングを合わせて進められます
タイミング療法と同様、基礎体温や経膣超音波検査などで排卵日を正確に予測したら、排卵日当日、もしくはその前日にAIHを実施します
まず男性の精液を採取しますが、これは病院内の採精室で行うか、精液検査と同じように自宅で採ったものを持参するようにします
採取された精液は、精子洗浄液と混ぜて遠心分離器にかけ、ゴミや細菌などを除去した上で、運動性の良い精子を選びます
なお、以前は精子そのものを注入していましたが、精液中には雑菌も混じっているので、AIH後に感染を起こすこともあります
このため、最近では多くの医療機関が、精液の洗浄濃縮を行っています
こうして精液の処理が終わったら、次は女性の子宮腔に0.3~0.5mLほどの精液をゆっくり注入します
この処理自体は、ほとんど痛みもなく、1分程度で終わります
AIH後は感染予防の目的で、1~2日間、抗生物質を服用します
もちろん、妊娠しても胎児に影響のない薬が選ばれます