今回は人工授精について、さらにもう少し詳しく記載していきます
女性の年齢や卵巣機能の程度にもよりますが、AIHは最初に自然周期で行い、それでうまくいかない場合はクロミフェン療法やゴナドトロピン療法などの過排卵刺激と組み合わせて行うのが一般的です
ただし、自然周期でのAIHの妊娠率はあまり高くなく、約4%と言われています
一方、クロミフェン療法と組み合わせた場合は7%程度、ゴナドトロピン療法と一緒に行う場合は、およそ14%とされています
過排卵刺激と併用した方が明らかに妊娠率が向上するため、自然周期でのAIHを数回行っても妊娠しない場合は、過排卵刺激と組み合わせたAIHに切り替えます
中には、最初から過排卵刺激と組み合わせたAIHしか行わないという医療機関もあります
過排卵刺激と一緒に行う場合、妊娠率は向上しますが、問題は多胎妊娠が増える点です
例えば、ゴナドトロピン療法では約20%、実に5人に1人が多胎妊娠で、しかも、その3分の1が三つ子以上とのデータもあります
胎児の数が増えるにつれ、母子ともに様々なリスクが増えてきますから、多胎妊娠は極力避けるべきです
このため、AIHでは排卵する卵胞の数を2~3個に収めるよう、経膣超音波検査で卵胞の数と大きさを確認しながら、ホルモン剤の量や投与法を調節するなどの対策が取られます
もし排卵数が多すぎると予測される場合は、夫婦と相談した上で、その周期での治療を中止することもあります
ただし、排卵数の調整や多胎妊娠については、医療機関がどのようなスタンスなのか、治療の際に確認しておくことも大切でしょう
AIHは、体外受精などの高度生殖医療(ART)と比べると、より自然妊娠に近く、経済的な負担も少ない治療法ですが、過排卵刺激と併用しても妊娠率には限界があります
また、AIHで妊娠する人は、最初の3周期以内に妊娠することが多いと報告されています
このため、半年ほどAIHにトライしても妊娠しないときは、より高度な治療であるARTへのステップアップを考える場合が多いようです